もち米とうるち米の主成分(でんぷん)|アミロースとアミロペクチンの特徴と違い

もち米を搗く風景

お米のなかには、もち米(餅米・糯米)とうるち米(粳米)という種類が違うものがあります。

見た目では分かりにくいですが、原材料の主成分『澱粉(でんぷん)』の特徴が活かされています。

今回は、そのでんぷん* の主成分であるアミロースアミロペクチンの性質の違いと、おかき・あられ・せんべいとの関係についてまとめてみました。

*でんぷんは「ブドウ糖(グルコース)」とも呼ばれ、炭水化物の糖質では多糖類に分類されています。

おせんべいが「パリッ」としているのは、お米の主成分である “ でんぷん ” の性質が関係しています。

でんぷんの主成分と性質の違い

お米の品定めをする風景(イメー画像)

デンプンは、α-グルコースが多数結合したもので、結合の仕方が違うアミロースアミロペクチンという成分によって出来ています。

アミロースは、グルコースが数百~数千個も直鎖状につながった形をしているのに対して、アミロペクチンはグルコースが数千~数万個が枝分かれした状態につながっています。

アミロースとアミロペクチンの構造の違い(作成図)

この2つの成分の比率が、お米の粘り気を左右することになります。

アミロースは硬さの成分と言われ、サラサラ感のある性質を持ちます。一方、アミロペクチンは粘り気と柔らかさの成分と言われ、モチモチ感のある性質を持ちます。

●アミロース・・・サラサラ感の性質

●アミロペクチン・・モチモチ感の性質

アミロースとアミロペクチンの比率

うるち米は、アミロースが約20%でアミロペクチンが約80%という比率で構成され、もち米は、ほぼ100%がアミロペクチンとなります。

種類アミロースアミロペクチン
うるち米20%80%
も ち 米0%100%

※うるち米の種類によっては、アミロースの比率は30%~15%程度の幅があります。

でんぷんの糊化(アルファ化)と老化(ベータ化)

でんぷんに水を加えて熱を加えることで、でんぷんのすきまに水分が入り込み膨張して糊状になります。この状態を一般的には「糊化(こか)」もしくは「α化(アルファ化)」と呼んでいます。

糊化した澱粉(でんぷん)は、分子間結合のミセル構造が崩壊し、体積が増加した状態を指します。

その状態から更に加熱して焼き上げることによって “ サクサク ” や “ パリパリ” とした食感のおかき・あられ・せんべいが出来上がることになります。

水分量が少ない状態では、でんぷんはβ化(老化)しないという性質を持ちます。このため、おかき・あられ・せんべいの美味しさが長持ちする最たる理由。

なお、防災用の非常食としても利用されているアルファ米を使った加工食品などは、α化(アルファ化)したお米を急速乾燥させたものになります。

参考

糊化(こか)とは、でんぷんに水分と熱を加わることで糊(のり)状になること。

コシヒカリの美味しさもアミロースに関係が?

コシヒカリのイメージ画像

コシヒカリの美味しさの秘密にもでんぷんの成分が関係しているのかな?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実は、コシヒカリのおいしさにもアミロースとアミロペクチンが関係しているのです。

一般的なお米では、アミロースが20%前後と言われています。しかし、コシヒカリではアミロースが16%前後になります。

アミロースの比率が低くなれば、それだけ粘り気の成分であるアミロペクチンが多いということになります。

よって、もっちりとした粘り気が多くなる分、食感もぷくぷくして食べ応えのあるものになります。コシヒカリの人気の秘密は“もち米”に近いという性質をもっているから。

ジャポニカ米とインディカ米の違い

インディカ米の画像

ひと昔前に、日照不足や長雨の影響で深刻な米不足の年がありました。1993年(平成5年)に政府は不足分を補うために緊急的にタイ国から米を輸入しました。その時に、タイ米を食べた記憶がある方もいらっしゃると思います。

タイ米は食感がパサパサとしたものだったので、ジャポニカ米に慣れ親しんでいる日本人にとっては嗜好に合わず不人気だったのを今でも覚えています。その理由が、アミロースがとても多い粘り気の少ない品種(インディカ米)だったからです。

しかし、高アミロースのお米は、ピラフやリゾットなどの料理には都合のよい利点もあります。お米の種類や性質を上手に使い分けることで、おいしい料理が出来上がります。

名前ジャポニカ米インディカ米
種類短粒種長粒種
長さ短い長い
米幅広い狭い
粘り気高い低い
つや多い少ない
主な生産地日本・中国などインド・東アジアなど
※分類は目安です。

まとめ

普段、何気なく口にしていると思いますが、おかき・あられ・せんべいとお米に含まれるでんぶんの成分(アミロース、アミロペクチン)とは切っても切れない関係だったのです。

現代は、技術や製法の発達により、うるち米であっても口あたりが優しいふっくらとした新潟系のおせんべいのようなソフトな食感のおせんべいもたくさんあります。

亀田製菓さんの「ぽたぽた焼き」、岩塚製菓さんの「味しらべ」、三幸製菓さんの「雪の宿」などが代表的。

科学や研究が発達する随分と昔から、人々はそれぞれの特徴を上手く活かして、さまざまな用途に応じてうるち米ともち米を使い分けてきました。

補足として、でんぷんの成分だけで美味しさが決まるわけではなく、その他の成分や品種、産地や栽培方法に加え製法や炊き方などの様々の要因が複雑に絡み合ってできるあがるものです。

お米の成分についてはとても奥が深く面白い分野。おかき・あられ・せんべいの違いにも、でんぷんの成分が関係していることだけでも知っていただければと思います。

●参考サイト
ブドウ糖(ぶどうとう)厚生労働省
●参考文献
・夏苅英昭・高橋秀依(編)有機化学 化学同人(2009)
・山田恭正(編)有機化学 羊土社(2019)

※各種成分は品種や使用する割合などによって異なります。
※写真やイラストはイメージです。