『青のり』と『あおさ』、『ヒトエグサ』は、おかき・あられ・せんべいにも良く使われる素材です。
磯の香りや緑色が独特で料理でも馴染みのある食材ですが、用途によって上手に使い分けられています。
すべて日本に生息する藻類の一種で、よく似ていますが、厳密には種類が違います。
今回は、青のり・あおさ・ヒトエグサの栄養成分を交えて特徴や違いについてまとめてみました。
3種類を撮影してみましたので、写真も参考になれば幸いです。
青のり・あおさ・ヒトエグサの分類表
青のりとあおさはアオサ科の藻類です。青のりはアオノリ属、あおさはアオサ属に分類されています。一方、ヒトエグサはヒトエグサ科のヒトエグサ属になります。
ヒトエグサ科のヒトエグサを伊勢志摩周辺などの一部の地域では、通称として「あおさ、あおさのり」と呼ぶことがありますが、当記事では分類表の通り3つに分けて表示し比較しています。
青のり・あおさ・ヒトエグサの見分け方
青のり・あおさ・ヒトエグサは、香りや色合い、食感や風味は異なります。用途によっても形態や大きさも変わってきます。
確実な見分け方は、商品パッケージに記載されている原材料名を確認することですが、中身を見比べてみないと色合いや形態の違いが分かりにくいかもしれません。
青のり・あおさ・ヒトエグサを撮影してみましたので画像で見比べて下さい。なんとなくでも違いを感じて頂けると幸いです。
※呼び名や分類は資料によって異なる場合があります。
青のりの特徴と産地
青のり(青海苔)は、糸状の藻類で香りや風味が豊かなため、あおさやヒトエグサに比べると高価です。
海水と淡水が混じる河口付近の汽水域(きすいいき)で育ちます。特に高知県の四万十川で採れる天然のスジアオノリは最高級品と言われています。主な産地は徳島県の吉野川、愛媛県、岡山県など。
青のりは、とても香りが良いうえにきめが細かく甘みもあるため、主に高級な料理や御菓子に利用されています。特におはぎなどの和菓子には欠かすことの出来ない素材。
食べ方としては、青のりの最大の魅力となる芳香を活かしたトッピング系が多いのが特徴です。
あおさの特徴と産地
あおさ(石蓴)は、葉状の藻類で青のりの仲間。海の浅いところにある岩場などに付着して繁殖します。
愛知県の三河湾をはじめ岡山県や日本広域で生息しています。青のりに比べると比較的安定して採取できるので、手ごろな価格で販売されています。
一部地域では「坂東粉(ばんどうこ)」や「青粉(あおこ)」とも呼ばれ、料理をはじめ加工食品や菓子類に幅広く使用されています。
青のりより少し香りが弱いと言われていますが、私自身は青のりとはまた違ったよい香りがすると思います。
あおさの食べ方としては、お好み焼きやたこ焼き、卵焼きなど。量を気にせずにたっぷりと利用できるのは嬉しいところ。
ヒトエグサの特徴と産地
ヒトエグサ科のヒトエグサは、漢字で『一重草』と書きます。
生産量は三重県が日本一を誇り、太平洋沿岸をはじめ、九州や沖縄が主な産地。沖縄では「アーサ」とも呼ばれ、海の野菜として親しまれ、汁物などの郷土料理に使われています。
葉がやや厚めなので煮込み料理や佃煮(つくだに)の原料に最適と言われています。色合いも美しいことから、食べ方としては、みそ汁や酢の物、てんぷら、ふりかけなどの料理に幅広く利用されています。
青のり・あおさ・ヒトエグサの栄養価
アオサ科の青のりとあおさは同じ仲間ですが、育つ環境が違うため栄養成分の値にも微妙に違いがあります。ヒトエグサと比べてみても栄養価は違います。
では、「青のり・あおさ・ヒトエグサの栄養価はどれが一番高いの?」という疑問が浮かぶかと思います。
そこで栄養成分表示やビタミン、ミネラルを比較してみましたのでご参考になればと思います。
青のりの栄養価のすばらしさは高価に値することがわかりました。
栄養成分表示の比較(100gあたり)
実際に、おかき・あられ・せんべいの原材料として使用されている量は、もっと少量ですが比較として100gあたりを目安としています。
カロリーは、たんぱく質・脂質・炭水化物の熱量の合計値。糖質は炭水化物から食物繊維を差し引いた数値となります。塩分は食塩相当量でご確認ください。
項目 | 青のり | あおさ | ヒトエグサ |
---|---|---|---|
エネルギー | 164kcal | 130kcal | 130kcal |
たんぱく質 | 29.4g | 22.1g | 16.6g |
脂質 | 5.2g | 0.6g | 1.0g |
炭水化物 | 41.0g | 41.7g | 46.3g |
– 糖質 | 5.8g | 12.6g | 2.1g |
– 食物繊維 | 35.2g | 29.1g | 44.2g |
食塩相当量 | 8.1g | 9.9g | 11.4g |
数値は比較的近いですが、炭水化物に含まれる食物繊維の割合が糖質を上回っている点が特徴的です。
食塩相当量は、使う量が少量の場合はそこまで気にする必要はないと思います。
脂質は青のりが、あおさとヒトエグサの数倍多く含まれています。
脂質は細胞膜や血管を強くしてくれたり、脂溶性ビタミンの吸収を高めてくれます。
食物繊維の含有量は魅力的。
脂質と脂肪の違い|中性脂肪は同じ意味ではないの?脂肪酸の種類 編
主なビタミン含有量(100gあたり)
種類 | 青のり | あおさ | ヒトエグサ |
---|---|---|---|
ビタミンA | 20000㎍ | 2500㎍ | 8500㎍ |
ビタミンE | 2.5㎎ | 1.1㎎ | 2.5㎎ |
ビタミンB6 | 0.50㎎ | 0.09㎎ | 0.03㎎ |
ビタミンB12 | 32.1㎍ | 1.3㎍ | 0.3㎍ |
ビタミンC | 62㎎ | 25㎎ | 38㎎ |
※ビタミンAは、β‐カロテン、ビタミンEは、α‐トコフェロールの値になります。
ビタミンについては、青のりがすべてにおいて多く含まれているのがわかります。
特にビタミンAとビタミンB12は、あおさとヒトエグサの数倍~数十倍。
ビタミンAは皮膚や粘膜を健康に保つ成分で目にも良いとされています。
ビタミンB12は貧血を予防したり神経の働きをサポートしてくれる成分です。
ビタミンとミネラルの働きと役割について|おかき・あられ・せんべいとの関係
主なミネラル含有量(100gあたり)
種類 | 青のり | あおさ | ヒトエグサ |
---|---|---|---|
ナトリウム | 3200㎎ | 3900㎎ | 4500㎎ |
カリウム | 2500㎎ | 3200㎎ | 810㎎ |
カルシウム | 750㎎ | 490㎎ | 920㎎ |
マグネシウム | 1400㎎ | 3200㎎ | 880㎎ |
リン | 390㎎ | 160㎎ | 280㎎ |
鉄 | 77.0㎎ | 5.3㎎ | 3.4㎎ |
青のりはリンと鉄、あおさはカリウムとマグネシウム、ヒトエグサはナトリウムとカルシウムが一番高い数値。
鉄分不足の方にとっては、青のりにおける鉄の含有量はかなり魅力的です。鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCも豊富なためとても優れた食品と言えます。
鉄分を多く含む食材とは?|せんべいとの食べ合わせならどれが理想?
まとめ:青のりの栄養価が全体的に高い
青のり・あおさ・ヒトエグサを数値だけで比べた場合、青のりの栄養価が最も高いという結果でした。
しかし、国産の青のりは希少ということもあってとても高価です。
メリットデメリットは、栄養バランスがよい点では甲乙つけがたいところ。
海苔を含めた藻類は『海の緑黄色野菜』とも呼ばれる健康な食生活には欠かせない素材です。
おかき・あられ・せんべいには1種類だけを使用しているものもあればブレンドをしているものもあります。食物繊維(水溶性食物繊維)を含むため腸活にも最適。
糖質(炭水化物)が多い、おかき・あられ・せんべいの素材としては理想的です。
腸活に欠かせない食物繊維の種類と働き|おかき・あられ・せんべいとの関係
【参考文献】
・「加工海苔入門」日本食糧新聞社
・大房剛「海苔をまいにち食べて健康になる」キクロス出版
※栄養成分の効能効果には個人差があります。
※写真やイラストはイメージです。