揚げせんべいや揚げおかきの香ばしい風味と食感は魅力的です。
しかしその一方で、油分やコレステロールへの懸念が頭をよぎることがあります。
ただ、血中コレステロール値に影響を及ぼす主な要因は、食品自体のコレステロール含有量とは限りません。
重要なのは、「摂取する油の質と量」という点です。
今回は、油の種類や摂取量に配慮することで、揚げせんべいを楽しみ続けるための「上手な付き合い方」を解説したいと思います。
正しい知識を基に、おやつタイムを豊かにしていただければ幸いです。

コレステロールを減らすポイントは油の種類!
コレステロールとは

コレステロールとは、脂質(Lipid)の仲間です。
エネルギー源となる三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の “ 脂質 ” 。
体内に存在している脂質は、中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪酸・コレステロールの4つ。
- 中性脂肪
- リン脂質
- 遊離脂肪酸
- コレステロール

コレステロールは、18世紀に胆石(胆嚢内の結石)の主成分として同定されました。
コレステロールの大半は体内合成

コレステロールは、食べ物で摂取するよりも多くの量が体内で合成されています。
資料によると約20%が食事による摂取で、残りの約80%は体内で作られているようです。
- 食事由来コレステロール:約20%
- 内因性(体内)合成コレステロール:約80%
佐々木敏氏の著書「佐々木敏の栄養データはこう読む!」(女子栄養大学出版部)に「食品中のコレステロール ≠ 血中コレステロール」とあります。
つまり、血中コレステロールの大部分は体内で作られ、全体に占める一部のコレステロールが食品に由来するという意味。

コレステロールの大半は体内で作られています。
揚げせんべいとの上手な付き合い方とは?

このことから、「コレステロールを気にしてお菓子を控える必要はない」と考えるかもしれません。しかし、「上手な付き合い方」のためには、別の視点を持つことが大切です。
ポテトチップスやケーキなどのお菓子を食べ過ぎてしまうと、結果として脂肪として蓄積され、肥満の原因になってしまいかねません。

いわゆる体脂肪!
では、おかき・あられ・せんべいはどうなのでしょうか?
食べ過ぎは結果として体脂肪を増やすことに繋がります。
摂取カロリーが消費カロリーを上回る状態が続くと肥満の原因に。
摂取カロリー > 消費カロリー
私も日頃から、肥満度の目安であるBMIや体脂肪率を常に意識しています。
また、間食なら200kcalを目安に適度な量を最適な時間帯に食べることも大切です。
脂肪酸の種類とコレステロール値の関係

LDL-コレステロールを上昇させると考えらているのが飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸が多いとよく話題にされてしまうお菓子がポテトチップスや揚げ煎餅…。
食品では肉類や乳製品が代表格。
- 飽和脂肪酸
- 一価不飽和脂肪酸(n-9系)
- 多価不飽和脂肪酸(n-6系、n-3系)
一方、LDL-コレステロールを減少させると考えらているのが一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸。
一価不飽和脂肪酸の代表例は、オレイン酸を多く含むオリーブオイル。
多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系ではDHAやEPAなどを含む魚油です。
飽和脂肪酸の摂取目標量
飽和脂肪酸の目標量は、総エネルギー摂取量に占める割合が7%以下とされています。
(例:1,800 kcal/日摂取の場合、飽和脂肪酸は14 g/日以下を目安に)
参考:日本人の食事摂取基準(厚生労働省)


普段の食生活で摂取する油脂の種類を意識することは大切!

※飽和脂肪酸の目標量は、総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)。
コレステロールの働き

コレステロールの働きは大きくは3つ。
- 生体膜の構成成分となる
- 胆汁酸の材料となる
- ステロイドホルモンの材料になる
コレステロールは、主にタンパク質やリン脂質、糖脂質とともに生体膜を作っています。
胆汁酸は肝臓で作られています。脂質の消化吸収に重要な働きをしています。
副腎皮質ではステロイドホルモン、精巣や卵巣では性ホルモンの材料に使われています。

実はビタミンDを作る材料としても利用されています。
コレステロールを運ぶリポタンパク質
コレステロールは脂質のひとつであるため水には溶けません。
そのため、血液のなかをカプセルのような殻「リポタンパク質」に入って移動しています。
リポタンパク質は4種類
このリポタンパク質は、比重や大きさによって4つに分かれています。
消化管で吸収された中性脂肪を肝臓へ運ぶ「カイロミクロン(キロミクロン)」と、肝臓で合成された中性脂肪を脂肪組織へ運ぶ「超低密度リポタンパク質(VLDL)」。
- カイロミクロン(キロミクロン)
- 超低密度リポタンパク質(VLDL)
- 低密度リポタンパク質(LDL)
- 高密度リポタンパク質(HDL)
次に、コレステロールを必要な組織に運ぶ「低密度リポタンパク質(LDL)」と、
各組織で余ったコレステロールを回収して肝臓に戻ってくる「高密度リポタンパク質(HDL)」です。
コレステロールを運ぶLDLを「悪玉」、コレステロールを回収するHDLを「善玉」と呼ぶことがあります。
コレステロールの合成
たんぱく質・脂質・炭水化物が代謝されて、最終的にコレステロールが合成されます。
肝臓をはじめ、体内組織の各細胞内で「アセチルCoA(有機化合物)」からコレステロールができます。
アセチルCoA▶︎HMG-CoA▶︎メバロン酸▶︎コレステロール
1日のコレステロールの生産量は、個人差はありますが体重1kgにつき約12〜13mg。
体重が50kgの人の場合だと、約600〜650mgが肝臓で作られていることになります。
まとめ

コレステロールは体内で約80%が肝臓を中心に合成され、残り約20%が食事から摂取されるため、食品からのコレステロールだけに頼らず体内合成にも注目することが大切です。
過剰な飽和脂肪酸(肉の脂身やバターなど)はLDLコレステロールを上昇させやすい一方、オリーブオイルに豊富な一価不飽和脂肪酸や、魚油に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)はLDLを下げ、HDLを増やす効果が期待できます。
また、食べ過ぎによる過剰エネルギーは内臓脂肪の増加につながるため、総エネルギー量と飽和脂肪酸の摂取比率(総エネルギーの7%以下が目安)を管理しつつ、適度なウォーキングなどの有酸素運動でHDLを高め、生活習慣病の予防を心がけましょう。
最終的には個人差もありますので、気になる方はかかりつけ医に相談しながら、自分に合ったバランスを見つけてください。
おかき・あられ・せんべいを毎日食べても太らない理由|ダイエット実践方法
【参考文献】
・川島由紀子(監)栄養学の基本がわかる事典 西東社
・中嶋洋子(監)改訂新版 栄養の教科書 新星出版社
・佐々木敏(著)佐々木敏の栄養データはこう読む! 女子栄養大学出版部
・田中文彦(著)忙しい人のための代謝学 羊土社
・田地陽一(編)栄養科学イラストレイテッド 基礎栄養学(第4版)羊土社
・薗田勝(編)栄養科学イラストレイテッド 生化学(第3版)羊土社
【参考サイト】
・日本人の食事摂取基準 厚生労働省
※写真やイラストはイメージです。