おかき・あられ・せんべいの違いとは?原材料と作り方を徹底解説

「おかき」「あられ」「せんべい」の違いをご存知ですか?

実は、使われているお米の種類で明確に分かれています。

お餅から作るのが「おかき・あられ」、主食のお米から作るのが「せんべい」です。

どちらも米菓(べいか)と呼ばれるお米のお菓子です。

今回は、原材料の違いから製造方法、味付けまで分かりやすく解説します。

どちらも米菓(べいか)の仲間。

※ここでの “せんべい”は、お米を使ったお菓子を前提に説明しています。

米菓の分類

米菓とは、文字通りお米で作ったお菓子のことで「米菓子(こめがし)」とも呼びます。英語では「Rice Cracker(ライスクラッカー)」と表現されます。

原材料で分けると『おかき・あられ』と『せんべい』の2つに分類できます。

米菓の分類表(主原料編)おかき・あられとせんべい(煎餅):製作者:おかきソムリエ

おかき・あられとせんべいの違いは、主原料となるお米の種類で区別されています。

下表は主原料別の分類例です。

米菓の種類主原料見分け方
おかき・あられもち米(餅米)原材料名に「もち米」
せんべいうるち米(粳米)原材料名に「うるち米」

形や大きさだけでは判断しづらい現代の商品も、パッケージの「原材料名」を見ると確実です。

もち米とうるち米は主成分となる澱粉(でんぷん)の性質が異なるため、特性を考慮して作られています。

もち米とうるち米の主成分(でんぷん)|アミロースとアミロペクチンの特徴と違い

おかきとあられ、結局何が違うの?


おかきソムリエとして活動していると、この質問も本当によくいただきます。

どちらも同じ「もち米」から作られる米菓ですが、基本的には「大きさ」で区別します。

  • おかき:比較的サイズが大きく、しっかりとした食べ応えのあるもの。
  • あられ:サイズが小さく、カリカリとした食感が楽しめる小粒のもの。

名前もユニークで、「あられ」は空から降る「霰(あられ)」に似ていることから、「おかき」は昔、お餅を欠いて(かいて)作ったことから「御欠(おかき)」と呼ばれるようになった、という説があります。

※名前の由来には諸説あります。

「おかき」と「あられ」の語源の違い|漢字ではどう書くの?

米菓の作り方の違い

おかきとせんべいの写真(撮影写真)

お米の状態から生地に仕上げて焼き上げる(または揚げる)までの工程を、それぞれ簡単に説明します。

あくまでも一般的な工程での解説となります。あらかじめご了承ください。

おかき・あられの作り方

洗米→蒸し→搗き→冷却→成型(切断)→乾燥→焼き(揚げ)→味付け

餅つきの様子(イメージ絵)
杵で餅を搗く様子

おかきとあられは、“もち米” を蒸してから搗いてお餅の状態にします。餅つきをされたことがあればイメージを思い浮かべていただけると思います。杵と臼で「ぺったんぺったん」と搗く光景はお正月に備える年末の風物詩。

お餅が出来上がったら冷蔵室で冷やして切りやすいように適度な固さにします。そして、頃合いを見計らって食べやすい大きさの形に切り分けます。

切り分けた生地は、水分の調整を行うために適度に乾燥。ここが米菓の最重要工程。昔は天日干しが主流でしたが、現代では用途に応じて専用の機械で乾燥を行うことが多くなりました。

おかきの生地を網に並べる様子(撮影写真)
天日干しのために生地を並べる様子

乾燥させた生地は、焼いたり揚げたりしておかき・あられになります。ちなみに焼く方を「焼き餅」、揚げた方は「揚げ餅」と呼び分けています。

せんべいの作り方

洗米→製粉→蒸し・練り→搗き→伸ばし→成型(抜き)→乾燥→焼き(揚げ)→味付け

せんべいを焼く風景図(出典:)
せんべいを焼く様子(江戸時代)

せんべいは、 “うるち米” を細かい粉にして米粉を作り、専用の機械でじっくりと蒸して練り上げます。

その後、生地をしっかりと伸ばして適当な厚さに仕上げ、丸や四角などの形に生地を抜いていきます。

抜いた生地は、均等に並べて保存や流通に適した水分量まで調整を行いながら乾燥させていきます。こちらも昔は、屋外での天日乾燥が主流でしたが、天候に左右されない専用の機械を用いて効率的に乾燥を行うことができるようになりました。

ふっくら焼き上げるものやしっかり固めに焼き上げるものがあります。目的によって火加減や時間が変わるため、職人たちが細かな調節をしながら美味しい “こんがり色” に焼き上げています。

焼き上げ

せんべいを網の上で焼く様子(イメージ画像)

おかき・あられ・せんべいは、炭火やガス火の上で網に挟んだり、並べたりして手作業で丁寧にひっくり返しながら、きれいな焼き色がつくまで丹念に焼き上げます。

自然素材のお菓子であるため、1枚1枚の膨らみ方や表情となる焼き色はすべて異なります。

現代は安定した設備のなかで割と均一に焼き上げられるようになりましたが、昔は季節や気候によって条件が大きく左右されていたため最適な焼き加減を調節することはとても大変でした。

ちなみに下の写真は私がおかき工房の体験にお邪魔した際に撮影した光景。

今からおよそ30年くらい前の写真で、三丁網(さんちょうあみ)に生地を挟んで、ひっくり返しながら炭火の上で焼いている様子です。

三丁網を使って炭火で焼く様子(撮影:おかきソムリエ)
三丁網を使って炭火で焼く様子

味付け(仕上げ)

せんべいに醤油を塗る様子(イメージ画像)
醤油を塗る様子

味付けは醤油が主流ですが、あえて何もつけずに素材感を楽しむ素焼き仕上げは素朴な味わいです。

生地の中には海老や青のり、胡麻が入ったものや醤油や食塩、砂糖、植物油脂、マヨネーズなどの調味料で味付けをしたり、焼き海苔や昆布で巻いたものまで沢山の種類があります。

春は桜えび、秋はきのこや栗を使ったものなど、季節の味覚を楽しめるのも米菓の魅力です。

時代のニーズとともに好まれる味は少しずつ変化していますが、おかき・あられ・せんべいの種類を調べると、まだまだ昔ながらの味付けが多くを占めています。

さいごに

せんべい5種類の写真(撮影写真)

おかき・あられ・せんべいは、まとめて「米菓」と呼ばれています。お米から作られるお菓子は、昔から日本人に愛されてきた伝統菓子です。

菓子の分類では干菓子(ひがし)に区分けされてます。それは、水分量が少なく日持ちがするという利点もあって保存食としての側面も持ち合わせていた証拠。

昔ながらの伝統製法で造られるものは、どこか風味が違うように感じられます。それはきっと手間暇と天の恵みがおいしさを引き出してくれているのだと思います。

最近では、自然災害のために備蓄されている家庭も増えてきました。ぜひ、いろいろな種類を食べていただき、お気に入りのおかき・あられ・せんべいを見つけていただければ嬉しく思います。

おかきソムリエとして、この記事が皆さまの米菓の世界を少しでも広げるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

※写真やイラストはイメージです。