おかき・あられ・せんべいの賞味期限はどのくらい?
賞味期限が切れていても食べることはできる?
日持ちがするお菓子と聞いているのだけど?
こういった質問をいただく機会があるので、賞味期限の設定基準についてまとめてみました。
今回は、安全係数や各検査との関係性を含めて詳しく解説したいと思います。
当記事は筆者の個人的な見解も含まれます。あらかじめご了承ください。
賞味期限の設定基準
賞味期限の設定は、科学的かつ合理的な根拠に基づいて期限を設定するように定められています。
微生物試験、理化学試験、官能検査などが主な検査方法です。
- 微生物試験・・・特性に応じて食中毒菌などの検査。
- 理化学試験・・・水分や水分活性、pH、酸価、過酸化物価指数などの検査。
- 官能検査・・・・見た目、香り、食感、風味などの検査。
そして、商品特性や今までの経験値などから、まずは“安全の目安となる基準日”を導きだします。
その基準日をもとに『安全係数』と言われる数値を使って賞味期限が決められることになります。
なお、基準日は品質や風味が保たれる最低限の日数です。
以下の表は、各試験結果の一例です。
130日 | 140日 | 150日 | 160日 | 170日 | |
---|---|---|---|---|---|
微生物検査 | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
理化学試験 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | × |
官能検査 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | × |
150日まではいずれの試験においても品質の変化や風味の劣化が見られないため、基準日を150日に定めています。
基準日の段階は、まだ賞味期限ではなく、あくまでも対象となる「おかき・あられ・せんべいの美味しさや安全性が保たれる最低限の日数」です。
安全係数で決まる賞味期限
厚生労働省・農林水産省の「食品期限表示の設定のためのガイドライン」では食品の特性に応じ、設定された期限に対して1未満の係数をかけて賞味期限を設定することが基本とされています。
具体的な数値は製造業者に委ねられており、一般的には0.7~0.9程度で設定されることが多く、商品の特性に応じて決定されています。
150日が基準日で安全係数を0.8とした場合には、賞味期限は120日で設定することになります。以下の通り、安全係数の値によって賞味期限の設定日数が異なってきます。
- 安全係数に0.7を用いた場合・・・150日 × 0.7=105日
- 安全係数に0.8を用いた場合・・・150日 × 0.8=120日
- 安全係数に0.9を用いた場合・・・150日 × 0.9=135日
実際には商品特性以外にも保存方法や保管場所によって品質の変化(変質)が左右されるため、消費者の安全などを考慮して各企業が最適な安全係数を経験値も踏まえて決定しています。
賞味期限の設定については、商品の種類や使用する原材料などによっても異なります。
下記表はあくまでも一例ですが、素材と味付けの分類による賞味期限の目安日数です。
種 類 | 素材や調味料など | 賞味期限 |
---|---|---|
醤油おかき | 醤油 | 120日~150日 |
ざらめおかき | 砂糖・醤油 | 120日~150日 |
海苔巻おかき | 海苔・醤油 | 120日~150日 |
サラダおかき | 植物油 | 90日~120日 |
揚げせんべい | 植物油・醤油 | 60日~120日 |
ぬれせんべい | 醤油 | 60日~120日 |
賞味期限切れの目安(例)
「賞味期限は未開封の状態で適切な保存方法で保管した場合に美味しく食べることができる目安」です。
賞味期限が切れたからといってすぐに食べることができないわけではありません。
一般的なおかき・あられ・せんべいの場合は、賞味期限が切れてから1~2週間程度が目安ですが、保存状態が良いことが絶対条件です。
食べる際には個人が自分の責任で判断することになります。これは、安全係数から逆算した理論上の猶予期間とは別に、実際の保存状態は各家庭によって異なり、保証できないためです
私の見解としては、賞味期限切れの製品を食べることは推奨していません。
気温の変化や保存場所、保管状態によっては、何らかの影響を受けている可能性が考えられるからです。
変質や腐敗、変敗などを少しでも感じたら、もったいないかもしれませんが食べることは避けましょう。
安全係数の逆算で考える猶予期間
安全係数がわかれば賞味期限切れの猶予期間を導きだすことは可能です。
ただし、安全係数は機密情報にあたるため、基本的には消費者は知ることはできません。
そのため国のガイドラインをもとに、一般的な安全係数を目安に考えてみたいと思います。
例えば、賞味期限120日に逆算値で0.8を用いた場合、120日÷0.8=150日となります。
理論的には賞味期限切れから30日以内となりますが、実際の保存状態や環境要因を考慮すると、前述の通り1~2週間程度を目安とすることが現実的です。
なお、逆算方法はあくまでも考え方の一例で、安全性を保証するものではありません。
まとめ:賞味期限内を推奨
賞味期限の設定には、商品の特性や流通環境、消費者の安全性、食品の廃棄ロス、包装資材の適性などといった多くの要素が絡み合っていて、各企業の品質管理責任者もさまざまな要素を総合的に考慮する必要があります。
環境問題の面から捉えると、適切な保存方法で保管をして美味しく食べられる期間内に消費することが理想的です。
おかき・あられ・せんべいには多種多様な味付けがありますので、商品の特性(原材料の種類や保存方法など)を意識していただき可能な限り早めに召し上がっていただければ幸いです。
作り手は、最高の状態で味わってほしいと願い、安全係数なども考慮して賞味期限を設定しています。その想いを受け取って、美味しく食べていただけることが、作り手にとっても一番の喜びです。
※写真やイラストはイメージです。