仕事柄、普段から「おかきとあられの違いを教えてください。」「漢字ではどう書くの?」などの質問をいただく機会があります。
そこで、今回は “ おかき ” と “ あられ ” の語源や作り方を交えて、それぞれの特徴と違いについて簡単にまとめてみました。
おかきとあられは、「かきもち(欠き餅)」とも呼ばれますが、おかきを漢字では「御欠」、あられは「霰」と書きます。
文中では親しみのある平仮名(ひらがな)を用いて説明しています。
おかきの語源は鏡餅(鏡開き)に由来する?
おかきの語源は、お正月や節句で供える “鏡餅(かがみもち)” に由来すると言われています。
鏡開きの日には、鏡餅をお雑煮や汁粉にして食べる慣習があり、神様にお供えしたものをいただくことで無病息災や五穀豊穣を祈ります。
お供え物を刃物で切るという行為を忌み嫌うという理由もあって、あえて刃物を使わずに手で欠きだしたり、木槌(きづち)で砕いたりして適当な大きさに分けていました。
そのため、「欠き餅(欠餅)」と呼ばれていましたが、時代とともに下記のように呼び名が変化してきたと推測されます。
もちをかきだす→かきだしたもち→かきもち→おかきもち→おかき
ちなみに「おかき」の「お」というのは漢字で「御」と表され、「お・おん・ご・み」と読むことができる日本語の敬語を作る接頭辞であり、敬意を表す意味をもちます。
昔の人々も神様へお供えものには、いろいろな意味で敬意を払っていた様子がうかがい知れます。
あられの語源は炒る音と空から降る霰にちなんでいるの?
あられについては、もち米を炒った際に「ポンポン」と音をたてる光景が、空から降ってきた霰(あられ)が跳ねる音に似ているということから「あられ」の名がついたという説。
もうひとつは、空から降ってくる霰(あられ)の形や大きさに近いということで、見た目から「あられ」と呼ばれるようになったとも言われています。
基本的には、おかきの中でも小さなものを指しますが、大きさやかたちの定義はありません。地域によっては大小問わず「あられ」と呼んだり、「おかき」と呼びます。
例外として『ひなあられ』のように地域によっては、もち米ではなく、うるち米を使うものもあります。
ちなみに、関東では「あられ」、関西では「おかき」と呼ばれることが多いようです。お米を主原料としている点においては、せんべいも米菓という括りで同じ仲間になりますが、狭義ではカテゴリーが違うものになります。
なお、せんべいにも、お米や小麦粉、澱粉などの原料によって様々な種類がありますが、漢字ではすべて「煎餅」で表すことができます。
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煎餅の起源は弘法大師『空海』が日本に伝えた説が有力?おかきとあられの漢字ではどう書くの?作り方は?
おかきとあられの漢字は、商品名によって当て字が使われることもありますが、基本的には先ほどの通り、おかきは「御欠」、あられは「霰」と書きます。
おかきとあられの作り方は、基本は同じと思っていただいても問題ありません。
まずは、もち米を精米して、きれいに洗って一晩程度漬けて蒸篭(せいろ)や専用の機械で蒸しあげます。そして、熱いうちに “ 杵と臼 ” や “ 餅つき機 ” でしっかりと搗きあげ粘り強い生地に仕上げます。
搗き上がったおもちは、容器に入れて冷蔵庫で冷やして固めます。この段階を “ 寝かせる ” と表現することもあります。
ある程度、生地が硬くなったら適当な大きさに切り分けて乾燥を行います。この乾燥の工程が最も大切なところです。乾燥しすぎると焼き上げた際に割れやすくなってしまいます。逆に乾燥が不十分だと焼いた際に芯(シン)が残ったり、焼きムラがでてしまい美味しい食感に仕上がりません。
今でも職人が生地を触ったり割ったりしてほどよい水分量を見極めています。まさに職人の経験が発揮される大切な工程のひとつです。
ほどよく乾燥ができたら最終工程の焼き又は揚げです。焼きたて(揚げたて)のアツアツの生地に醤油やサラダ油、マヨネーズなどで味付けを行います。
この全工程を約1週間ほどかけて完成する、とても手間と時間がかかった御菓子です。焼いたものを「おかき」又は「あられ」と呼びます。油で揚げたものは「揚げもち」や「揚げおかき」と呼んでわかりやすいように区別されています。
色々な方々とお話ししていても、おかき・あられは関東では “ 揚げ ” のイメージ、関西では “ 焼き ” のイメージを思い浮かべる人が多いように感じます。
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おかき・あられ・おせんべいの原材料と作り方の違いさいごに
日本人にとっての食事の基本は、一汁三菜(いちじゅうさんさい)とされています。その中でもご飯と味噌汁がもっとも相性が良いと言われています。
それは、お米には少ない栄養素を発酵食品である味噌のもつ栄養素で補うことができる利点があります。さらに醤油やお酢などを合わせることで更なる美味しさの相乗効果も期待できます。
お米(炭水化物とも呼ばれる糖質)+味噌(たんぱく質に含まれる豊富なアミノ酸)+具材(野菜に多い食物繊維)
おかき・あられも伝統的な食文化から受け継がれてきた生活の知恵が凝縮されているものなのかもしれません。今では科学的な根拠がだいぶんとわかってきましたが、昔の人々の知恵にはいつも驚かされます。
2013年に「和食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。おかき・あられ・せんべいもまたお米を主食とする日本人にとってはもっとも親しみのある御菓子です。
最近は、おかき・あられも海外で「Japanese Rice Cracker(ジャパニーズライスクラッカー)」と称されて人気が高まりつつあります。
いろいろな企業が原料となる素材・製法・味付けにこだわり、創意工夫をしながら美味しい商品に仕上げてくれています。
ぜひ、お好みの品を見つけていただき、楽しく美味しい時間を過ごしていただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。当記事が何かの参考になれば幸いです。
【参考文献】
・清水桂一『たべもの語源辞典』東京堂出版
・山本候充『洋菓子・和菓子・デザート 百菓辞典』東京堂出版
※歴史や起源・由来には諸説があります。
※写真やイラストはイメージです。